トワイライトエクスプレス乗車レポート
予約できない、切符が取れない事でも有名な、大阪駅と札幌駅を約22時間かけて走る日本を代表する豪華寝台特急トワイライトエクスプレス。
豪華といっても、車内の設備が豪華なのと、豪華なA寝台個室があるというだけで、B寝台もたくさんあり、値段的にはかつてたくさん走っていたブルートレインと変わりません。カシオペアみたいにすべてが豪華というわけでなく、比較的リーズナブルに乗車することができる良心的な列車なのです。それなのに、トワイライトエクスプレスは、カシオペアと違って、日本海に沈む夕日や、朝ぼらけの北海道の大地など、車窓をゆっくり楽しむことができる特別な列車なのです。
ゆえに、トワイライトエクスプレスにいつかは乗ってみたいという人は非常にたくさんいます。
ですが、そんな人達の夢を裏切って、トワイライトエクスプレスは2015年3月12日に、大阪駅と札幌駅の出発を最後に廃止されます。
私は、この廃止直前の2月9日の大阪駅からの下りトワイライトエクスプレスのB個室シングルツインを10時打ちでゲットできました。
せっかくなので、その時、トワイライトエクスプレスに乗車した際の、JR西日本や旅行会社のサイトでは決して分からない、実際乗ってみたならではのトワイライトエクスプレスをより楽しむためのノウハウ満載の乗車レポートを書きました。
ちなみに、私は、トワイライトエクスプレスには、これで3回目の乗車となりました。過去すべてシングルツインです。
なので、このレポートでは、A個室の事については触れませんことをご了承ください。
実は、この日は日本海側は荒天予報で、トワイライトエクスプレスが運休にならないか、かなり微妙な日でした。
トワイライトエクスプレスが走るコースには羽越本線があり、強風や大雪の影響を非常に受けるのです。
ですが、何とかトワイライトエクスプレスは運休にはなりませんでした。
ただし、もちろん、遅れました。札幌駅着は約1時間の遅れでした。
てか、よく1時間遅れで着いたものだ。
なお、遅れたことに対して、誰一人クレームを言わないのがトワイライトエクスプレスです。
トワイライトエクスプレスは、定刻通り走ることの方が珍しいと言っても過言ではありません。
ゆえに、トワイライトエクスプレスに乗車する際は、キツキツのスケジュールは絶対的なNGですよ。
トワイライトエクスプレスは、大阪駅の10番ホームから、11:50分に発車します。
10番ホームに入線する時刻は11:11分です。
私は、大阪駅前の地下通路を通り、阪神百貨店の地下食料品売り場で、つまみやお酒を買って、入線の時刻にはホームにスタンバイです。
それはなぜかと言うと、トワイライトエクスプレスが入線する時には、レストランのシェフなどが、トワイライトエクスプレスに向かって深々と礼をする儀式があるからです。
その写真を撮ろうと、ホームにはたくさんの鉄道マニアや乗客がカメラを構えていました。
ちょっと異様な光景です。
話を元に戻して、その瞬間はやってきました。
それを見たら、トワイライトエクスプレスは特別な列車なんだなということがよく分かりました。
トワイライトエクスプレスの入線後は、先頭のヘッドマークがついた牽引車の撮影等をして、荷物を部屋において、トワイライトエクスプレスの探検です。
ホームでは、「切符を持っていない方のトワイライトエクスプレス内への立ち入りはお断りいたします。」と、アナウンスが繰り返されていました。ちょっと優越感。
私の部屋は、サロンカー隣の5号車の10番個室です。しかも日本海側です。シングルツインとしては、もっともいいポジションの部屋でした。
車内の探検は、1号車2号車はA個室のスイートとロイヤルなので、行きませんでした。
3号車はレストランカーいわゆる食堂車です。ここはいずれ来るので省きました。
4号車は、誰でもが自由に利用できるサロンカーです。窓は屋根まで回り込み大きく、すべての席が日本海側を向いています。
席の高さも日本海側席が一段低く、通路を挟んだテーブル席の人の視界を妨げないようにできています。
日本海に沈む夕日を眺めるためにできたような車両です。
このサロンカーは、日本海懐石御膳や弁当などを食べたり飲んだりできます。
車掌さんが、所々で観光解説してくれたり、スタート時にはおいていないのですが、手作りのスタンプがあるのもこのサロンカーです。
また、シャワー室が2つと飲料とおつまみやお菓子の自動販売機があります。自動販売機にはシャワーセットもあります。
普通の自動販売機より、ほ~んの少しだけ割高ですが、トワイライトエクスプレスの中と考えると意外に安いと感じます。
5号車と6号車は、B個室のシングルツインとツインです。
7号車は、B個室ツインと誰でもが利用できるミニロビーです。
ただし、ミニロビーは小さく、窓も普通です。ミニロビーには、カード式の公衆電話と飲料の自動販売機があります。8号車と9号車は、Bコンパートです。
いわゆる普通の2段式の寝台です。
とはいえ、4人ごとの区画で通路にドアがあり、簡易個室にできるのが、かつてのブルートレインのBコンパートとは違うところです。
以上がトワイライトエクスプレスの中の紹介でした。なお、各車両の通路は狭く、譲り合わないといけません。 さあ、いよいよトワイライトエクスプレスの出発です。
ゆっくりと大阪駅を出発します。
そして、「今日はトワイライトエクスプレスにご乗車いただきましてありがとうございます。みなさまの夢を乗せましてトワイライトエクスプレス、大阪駅を発車いたしました。」の名物アナウンスが、いい日旅立ちの音楽とともに流れてきます。もう、鳥肌もんですよ。
車掌は、1号車と9号車の両方から、切符の拝見と、個室の場合にはカードキーを渡しに来ます。カードキーは返さなくてもいいので、記念にもらえます。
この時、5号車のシングルツインは、数少ないA個室の次で、結構早くに車掌が来てくれるので、助かります。
以前、6号車のシングルツインに乗った時は、京都駅過ぎまで来なくて、部屋から出れませんでした。
さて、ここで、私が利用したシングルツインという部屋の設備を簡単に解説します。
まず、部屋には大きな鏡があり、ハンガーが二つあります。ゴミ箱もありますし、コンセントもひとつですがあります。
イヤホンを使用してのオーディオ設備もありますが、使う人はいないでしょう。
スリッパと浴衣もありますが、部屋以外はNGです。
上には補助ベッドがあり、狭くていいのであれば2人でも利用できます。
エアコンも切と強弱の3段階で調節できます。で、ぜひ知ってもらいたいのが、個室内の電燈です。
全部で4つあり、それぞれを組み合わせて、明かりの調節をすることができます。
天井灯なんかは、つまみで自由に明かりを調整できます。
これらを調節して暗くすれば、夜に室内の明かりが窓に反射しなくて、夜の車窓を眺めることができます。
「夜の車窓って?」と思うかもしれませんが、意外に見えます。かなりおすすめです。
はっきり言って、トワイライトエクスプレスは寝る暇なんかないですよ。
ついでに、2人用B個室のツインについても簡単に解説します。
まず、設備や備品等は、シングルツインと同じです。
違うのは部屋の構造です。
シングルツインは、進路と平行にある部屋なのですが、ツインは垂直になっています。
このため、窓側の椅子は、車窓を背にすることになります。まあ、無理矢理横に座れば車窓を眺めることはできますが…
部屋自体は、2人で使う事を想定しているだけあって、シングルツインより広くなっています。
そして、上にあるベッドにも窓が付いています。この点はシングルツインと大きく異なる点です。
だから、寝そべって、高い位置からの車窓を楽しむことはできますね。
ツインの説明は以上です。
5~9号車のトイレは、各車両に2つずつあります。
コンパート車両は、和式トイレが2つのようですが、B個室車両は、ひとつは洋式トイレです。
なお、洗面台は2つずつあります。
トワイライトエクスプレスは、新大阪駅を出て京都駅に向かいますが、この区間で上りのトワイライトエクスプレスとすれ違います。もちろん、お互いが定刻に走っていた場合ですが…
ところで、京都駅前後で、やっておくべきことがあります。
それは、ランチタイムの整理券をもらっておくことです。
以前(近い所では8ヶ月前)は、整理券なんかなかったのですが、トワイライトエクスプレスの廃止前なので、非常な混雑に対応するための措置だと思います。
ランチタイム開始は、車内アナウンスするとのことですが、それを待っていたのでは、いつになるか分かりませんので、この行動は必ずしておいた方がいいです。ちなみに、ランチタイムは13時からです。
で、そのついでにレストランカーで、シャワー室の予約をしてください。
シャワー室の使用時間は30分で、30分単位で空いている時間に予約を入れることができます。
いい時間帯ほどすぐに埋まるので、シャワーの予約は急いだ方がいいですよ。
なお、シャワーの料金は300円です。
シャワーカードをくれます。これがまたいい記念品になります。
そして、ランチタイムが来ました。
私は、なんとか第1回目の13時スタートの回になることができました。
ランチは、もちろんレストランカーのダイナープレヤデスです。
席は、基本的に相席になります。
私は、4人席になりました。4人席は琵琶湖側のテーブルです。
相席といっても、トワイライトエクスプレスを楽しむという目的は同じなので、すぐに打ち解けることができ、楽しかったです。
ぜひ、おしゃべりを楽しみましょう!
私は、オムライスと生ビールを注文しました。
注文を受けてから一つ一つ調理するので、結構時間がかかりました。
ランチタイムの区切りは30分単位です。
私が食べ終わったらもう15分くらいオーバーしていました。
なので、2回目(13:30~)以降のランチにずれ込む形です。
よって、整理券は可能な限り第1回目(おそらく28番まで)のをもらえるように、整理券配布スタートのタイミングを逃さないようにしましょう。
で、会計を終え、部屋へ戻ります。
なお、ダイナープレヤデスでの支払いは、ランチタイムだけでなくすべて現金のみです。
部屋では、再び車窓を見ながらゆっくり飲んで過ごします。
荒天という割には、福井県内はそこそこ晴れていました。
途中途中、車窓から見えるものに対してのアナウンスが入ります。
たとえば、北陸トンネルがどうだとか、福井市はどんな街だとかです。
こういうのも、トワイライトエクスプレスならではです。
途中で、明日の朝食をどうするか聞きに来ました。
せっかくなので、お願いします。
席が埋まっていない時間をいくつか案内され、その中から好きな時間を指定できます。
朝食も30分単位です。
そうこうしていると、石川県内に入りました。
さすがに、この辺りからかなりの雪と風になりました。
ここからがトワイライトエクスプレスの真骨頂のいいところなんですが、仕方ない。
運休にならなかっただけでも感謝です。
なお、晴れていたらこんな景色が広がります。以下2枚は、8ヶ月前に母親とトワイライトエクスプレスに乗った時の写真です。本当に最高でしたよ。
今回の日本海側の景色は、まさに冬の日本海の厳しさです。まあ、それはそれで楽しかったです。
19時になると、シャワーを予約していたので、シャワー室に行きました。
シャワー室では鍵をかけて、シャワーカードを入れます。
ここで注意なのが、シャワーカードを入れてからは、出るまでは鍵を開けたらいけないことです。
ラスト1分になったらアラームが鳴ります。
シャンプーはありませんが、ボディーソープは付いています。
ドライヤーもありますので、髪を乾かすことができます。
それにしても、ここも列車内とは思えない。
そして、6分間のお湯でもかなり使用できます。
そんなこんなで、きれいになった&あったまった状態で部屋に帰ります。
5号車の10番個室は本当にすぐそこなので、便利です。
シャワーの後は、部屋に届けられていたトワイライト特製2段重を食べながら、本格的に飲み始めます。
私は、ダイナープレヤデスのフルコースフランス料理は予約していなかったので、部屋でゆっくり飲むことができます。
ただし、21時から2時間の間は、ダイナープレヤデスのパブタイムが始まりますので、そのために少しお腹に余裕を残しておく必要がありました。
そして、パブタイムです。
パブタイムは、整理券や予約も必要なく、自由な時間に行くことができます。
とはいえ、満席だったら、並んで待ちます。基本的には相席です。
私の経験上、最初の1時間くらいは混みますが、後半1時間ぐらいから空き始めます。
ラスト40分くらいのタイミングで行くと、待ち時間はおそらくありませんよ。
なお、フランス料理のフルコースディナーを頼んでいない人は、パブタイムはぜひ利用してください。
なぜなら、夜のダイナープレヤデスは、ものすごく雰囲気がいいからです。
とても、列車の中、それも食堂車とは思えません。ちょっとしたフランス料理店よりも雰囲気がいいのではないでしょうか。
パブタイムは、大人のゆっくりしとした時間を楽しむことができます。
相席の人と会話も楽しいですよ。
なかには、お酒が飲めないという人もいると思いますが、アップルジュース等のソフトドリンクもありますのでご安心を。
私は、スモークサーモンと生ビールを頼みました。
値段も列車の中とかフランス料理店と考えると決して高くはありません。
なので、パブタイムにはぜひ行ってください。
パブタイムの後は、部屋に戻って、椅子をベッドに組み替えます。
そして、部屋の明かりを暗くして、ベッドに座って、飲みながら夜の車窓を満喫します。
その頃には雪が止んでいていい感じでした。目が慣れると、想像以上に夜の車窓を楽しむことができますよ。
やがて、秋田駅の運転停車をすぎて、トワイライトエクスプレスが奥羽本線を走っている頃に、眠気に負けて寝てしまいました。
そして、起きたら青函トンネルをに抜けて北海道の木古内付近を走っていました。北海道に入ったわけです。北海道が初めての人は、感激しますよ。
日本海側の個室は、青森駅と五稜郭駅間は、進行方向が逆になるので、この函館付近でも海側になります。
その先は、海側でなく山側です。
そうこうしていると、朝食の時間になりましたので、昨日予約時にもらっていた予約カードを持って、食堂車ダイナープレヤデスに行きます。
以前の朝食メニューは、和食と洋食から選ぶことができたのですが、今は選択肢はなく洋朝食です。
価格は、税込1620円です。やや高めなのですが、どこぞのお嬢様が食べるようなすんげーオシャレな朝食なので、むしろ安いと思います。
トワイライトエクスプレスに乗車するのであれば、朝食もぜひ!!
ただ、30分単位なので、けっこうせわしいです。
朝食のタイミングや運行状況にもよりますが、車窓には大沼公園や噴火湾を眺めながらの朝食ロケーションになるかもしれません。
相席の方に写真を撮ってもらったりしながら、最高の朝食を楽しんで、再び部屋で飲みなおします。
この頃には、乗車時に買っておいて、クーラーバックで冷やしておいたビールもなくなったので、トワイライトエクスプレス内で買いました。
冷えた缶ビールは、ダイナープレヤデスで販売しています。自動販売機では売られていません。
1本300円で、アサヒとサッポロから選択できます。
サッポロと聞けば「クラシック」と思うところですが、残念ながら大阪発の下りトワイライトエクスプレスは、黒ラベルです。
北海道の車窓は楽しいです。
日本海側の景色であれば、有珠山や昭和新山、樽前山などの山々を望むことができます。
そうこうしているうちに、トワイライトエクスプレスは南千歳駅に着き、いよいよ札幌駅に着く時間が近づいてきました。といっても、まだ40分かかるんですけどね…
それでも、荷物をまとめて、下車の準備をします。
そして、ついに間もなく札幌駅に着く旨の車窓のアナウンスが!
そのあと、いい日旅立ちのメロディーとともに「今日はトワイライトエクスプレスにご乗車いただきましてありがとうございました。トワイライトエクスプレスの旅をご満喫していただけましたでしょうか?まもなく、札幌に到着いたします。」のアナウンスも。
この出発と到着がセットになっているアナウンス、大阪駅を出る時は、最高なのですが、札幌駅に着くときは、ものすごくさびしい気持ちになります。きっと、この車内に乗っている半分以上の人がさびしい気持ちになっていると思います。
そもそも出発は「ありがとうございます」だったのに到着は「ありがとうございました」です。夢への入口と出口です。もう現実への出口が近いことを知らせてくれます。
そして、札幌駅に到着しました。
トワイライトエクスプレスは、乗客が降りたら、すぐに車庫に行きますので、急いで先頭の機関車を撮影に行きます。
そこには、たくさんの人が撮影していました。
札幌駅のホームって、大阪駅より短くて、ほんとにギリギリで、写真も撮るのもギリギリです。
「ありがとう!最高だったよ。」の気持ちでお見送りします。
さあ、とにもかくにも札幌に到着しました。
トワイライトエクスプレスって、この列車に乗ること自体が旅や、観光や目的みたいなものなので、もう終わった感がありますが、私の北海道旅は今からがスタートなのです!!
それにしても、出発から到着までよく飲んだな。
ということで、乗ったら最後、22時間ゆっくり過ごすことしかできないという贅沢を味わえる、廃止目前のトワイライトエクスプレスの乗車レポートでした。
2015年2月中旬