モンブラン登山
モンブランは、ヨーロッパアルプスの最高峰で、標高は4810mの山です。
モンブラン自体は、フランスとイタリアの国境にありますが、山頂はフランスに位置しています。
モンブランは、別名「アルプスの白き女王」とも言われ、近代アルピニズムの原点ともいえる山です。
ヨーロッパアルプスの4000m峰の中では比較的登りやすく、フランスやイタリアだけでなく世界中から登山者が訪れます。
登頂率は、5割とか6割とか言われていますが、モンブランを登ろうという人は、一線を越えている人がほとんどなので、そう考えるとかなり低いのかなと思います。
といっても、技術的だったり、体力的にリタイヤというよりも、天候で止むを得ず撤退ということの方が多いようです。
日本でもモンブランに登ってみたいという人はかなりいます。
やはりモンブランって、登山をしていない人でも知っているくらいのビッグネームな山なんですよね。
日本だと、エベレスト、キリマンジャロ、マッターホルンに次いで海外の山では名前を知られているのではないでしょうか?
私は、2016年7月上旬に、アドベンチャーガイズのツアーでモンブランに登ってきました。
その時のモンブラン登山レポートです。
私は、手配してくれているチケット通りに関空からドバイに飛んで、そこで乗り換えてジュネーブに向かいました。
ジュネーブ空港では、現地のガイドが迎えに来てくれていました。
他のメンバーとも合流し、車でシャモニーへ向かいます。
シャモニーでは、ホテルに入り荷物を置き、他のガイドを加えて、簡単に街の案内をしてくれました。その後、各々の自己紹介もかねて簡単に飲み会をしました。メンバー通しが仲良くできるような心遣いはなかなかです。
2日目は、ロープウェーでブレバンに上がり、高度順応もかねて標高2400mくらいのところで、簡単な岩登りやアンザイレンの練習をしました。
3日目は、富士山よりほんの少し高いエギーユデュミディにロープウェーで上がり、そこにあるカフェでお茶をしたり、展望台からの眺めを楽しんだりしながら体を少し慣らしました。
前日の2400mのトレーニングがあったとはいえ、ロープウェーで一気に3800mまで上がるので、頭がぽ~っとしました。
その後、ガイドとロープにつながれて、ナイフリッジを下り、バレブランシュで高度順応と氷河歩きのトレーニング。
シャモニーからモンブランにガイド付きの登山する場合は、このバレブランシュでのトレーニングはほぼ全員がしているようです。
正直、このバレブランシュでのトレーニングは、体が高さに慣れていないため、かなりきつかったです。
特筆すべきは、ミディに上がるロープウェイの急さとスピードです。
下りの時は、支柱を通過した時にGを感じました。
ところで、シャモニーでは、登山道具をかなり安価に買うことができます。
スネルスポーツという大きな登山用具店もありますし、それ以外の店もかなり安い。
びっくりしたのは、スポルティバの厳冬期用のアルパインブーツの安さです。
日本では定価に消費税が一般的ですが、それと比べると6割くらいの価格です。
そして、4日目、いよいよモンブラン登山初日の日です。天気は、曇りです。
モンブラン登山は、なんと1泊2日の日程です。
この日は、標高3835mのグーテ小屋までの道のりです。
まず、シャモニーをバスで出発して、レズーシュに行きます。
そこからロープウェーに乗って、1900m地点まで上がり、そこからほんの少し歩いて、今度は登山鉄道に乗り換えます。
その辺りの高原チックな景色はなかなかいいですよ。
ベルビューからアプト式の登山鉄道に20分弱乗車したら、標高2380mの終着のニデーグルに到着します。
ニデーグルにはトイレもあります。
ここで15分ほど体を慣らした後、、モンブラン登山がスタートです。
最初のうちは、比較的楽な登りが続きます。
雪はありませんが、徐々に雪の部分が出てきます。
テートルース小屋までの後半は、やや急になりますが、それでも登山としては普通です。
とはいえ、テートルース小屋の標高は3167mです。若干空気の薄さを感じます。
なお、テートルース小屋が近ずくにつれ、雪の部分が多くなりますが、アイゼンはまだ不要です。
で、テートルース小屋に到着です。
ここで、みんなでシェアして昼食を食べます。ボリュームが半端ないです。そして、山小屋離れしたかなりオシャレな食事、かつ、おいしい。
食事とトイレと休憩を済ませ、テートルース小屋を後にして、グーテ小屋を目指します。
目指すグーテ小屋は見えています。
ここからが本番です。
アイゼンを着けて、ピッケルを握りしめ、ハーネスを着けてガイドとロープにつながれます。
テートルース小屋―グーテ小屋間は、岩登りの区間です。
といっても、ワイヤーが張っていますし、ステップなんかも取り付けられています。
3点確保で登れば問題ないレベルです。
難易度としては、槍ヶ岳の穂先に登るくらいのレベルです。
しかし、雪が多い部分があるので、アイゼンを着けてですので、それに慣れていないのでかなり難しい。
おまけに、すでに日本で2番目に高い北岳よりも高い標高です。空気がうすい。
さらに、槍ヶ岳の穂先なら20分もあれば頂上ですが、ここは3時間です。
なのに、ほとんど休憩がありません。
なぜかというと、この区間は落石多発地帯だからです。
私たちが登っている時も、1個や2個ではなかったです。
それも、石だけでなく岩も!
私は、そこそこの登山経験がありますが、こんなに石や岩が転がってくる場所は初めてでした。
ちなみに、このルートでのモンブラン登山の事故のほとんどはこの区間だそうです。
素早い通過が必須の、クーロワールという、落石と雪崩多発のトラバースも下の方にあります。
このルート、滑落なんかより落石がすげーこわいです。
そんな感じなので、休憩できる場所がほとんどないんですよね。
なので、ほぼぶっ通し。
空気が薄いのも手伝って、本当にきつかったです。
グーテ小屋より上の区間より、よほどきつかったです。
正直、心の中では「まだか!?まだか!?」を繰り返していました。
休憩も余裕もなかったので、この区間の写真はありません。すいません。
そんななか、恐怖が自分たちを襲ってきました。
旧グーテ小屋に着く直前くらいで、雷雲にすっぽり捕まりました。
グーテ小屋まで10分くらいだったのですが、すぐそこで雷が鳴るわ落ちるわで生きた心地がしませんでした。
なにはともあれグーテ小屋に到着しました。
新しいグーテ小屋はかなり快適な山小屋です。
グーテ小屋については別ページ「グーテ小屋の宿泊レポート」を参照
翌日、2時起床。
かなりぐっすり寝ることができました。
そのため、呼吸が浅くなったせいか、軽く頭が痛い。
フランスパンの軽い朝食を済ませ、アタックの準備をします。
寝る前に、山頂に持っていく荷物と置いていく荷物を分けていたので、いらないものは、入口のロッカー区画に置いて出発です。
ここからは、完全雪山仕様です。
とはいえ、ヴァロ小屋までは、ピッケルだけでなくストックもかなり重宝されます。
ハーネスを着けてガイドともう一人とロープで結ばれます。
ヘッドランプを着けて出発です。
天気は快晴。風も弱く、寒さもそこまでではありません。コンディションは最高です。
ちょっと登ると、シャモニーの夜景を望むことができます。
はるか下のシャモニーの夜景はなかなかきれいです。
もちろん、星空もきれいです。
まずは、前方にそびえるドームデュグーテ(標高4304m)を目指します。
実は、ドームデュグーテまで行かないとモンブランは見えません。
ドームデュグーテに着くと、モンブランが見えます。
しかし、まだまだ遠い。
氷河の上を歩いて、次の目標点であるバロー小屋を目指します。
氷河の上の雪原と急登でバロ小屋に向かいますが、雪原でも息が上がります。急登は心臓がバクバクです。やはり4000mを超えると空気がうすい。
標高4362mのバロ避難小屋には、外にトイレがあります。
ちょっと前までなかったのですが、できたようです。
私は、大きい方がしたかったので、トイレに行きました。
アンザイレンだとトイレに行くのも楽ではありません。
ロープをほどいて、ハーネスを外して初めてトイレに行くことができます。
このトイレ、ものすごく汚い。
便座にウンコが付いているレベルでなく、乗っかっている様なトイレです。
でも、そんなの気にしているような余裕はありません。
それくらいハードな登山です。
バロ小屋の所は広くなっていて、雪原です。
そこで、雪原にストックを立てて置いていきました。
いよいよ核心部ということです。
バロ小屋から見ても、まだまだ何回も急登があります。
ちょっと心が折れそうです。
おまけに一部の急登部分は、昨日の雷の時の雹がそのまま降り積もっていて、アイゼンが利かず、ズルズルと滑ります。なので、脚はパンパンです。そういう所は息もハアハアでなくゼエゼエです。
イタリアとの国境稜線のナイフリッジは、思ったよりも幅があり、怖さは一切ありませんでした。
そして、天に続くステップを登り、ついにモンブラン山頂に到着しました。
ヨーロッパアルプス最高峰モンブランに登頂成功です。
すごい達成感です。
だって、ものすごくきつかったもん。
1kgのアルパインブーツにアイゼンを着けているので、片足1.5kgの状態で、ほとんど休憩なしで登ってきましたから!!
モンブランの山頂は、広くはありませんが、10~20人くらいはいることができます。
モンブランは、ヨーロッパアルプス最高峰だけあって、360度遮るものがありません。景色は、すごいです。
まず、なんといってもヨーロッパアルプスの山々です。
直線で軽く50km以上離れているマッターホルンやモンテローザもくっきり望めました。
眼下にはシャモニーの街を見下ろせます。
コンディションが最高な上に空気も澄んでいるので、絶景の極みです。
山頂では、写真を撮ったり景色を眺めたりしながら、約15分滞在して、今度は下山開始です。
高度が下がっていくので、そういう意味では楽なのですが、この日中に完全に下山するわけです。すでに疲れているのに、まさに地獄の下山の始まりです。
まずは、バロ小屋を目指します。
氷河の大雪原と景色を眺めながらの下山なので、気分がいいです。
でも、足元を見るのが基本です。油断したら落ちます。
バロ小屋での所でストックを回収し、ガンガン下りていきます。
そして、グーテ小屋まで下山してきました。
グーテ小屋では、トイレを済ませ、軽く休憩し、置いていた荷物を回収し、出発です。
鉄道のタイムリミットがあるので、ゆっくり休憩とはいきません。
グーテ小屋からは、昨日の岩登りが下りになります。
疲れ切っているなかで、精神的にも気を遣い、かなりきつかったです。
もちろん、休憩などありません。
私は、上りも下りもこの区間が一番きつかったです。
それに加えて、随所で登ってきている人とシビアな場所ですれ違いをするために、時間がかなりかかりました。
そして、着々と進んでテートルース小屋の所に到着です。
ここで、アイゼンとロープから解放されました。
アンザイレンは、ソロで登山をしている事が多い私にとっては、かなりのストレスでした。
ニデーグルからの時間があるので、ここでも、行動食を食べて水分を補給して装備を整える程度の休憩しかしませんでした。
ここからは、普通にたんたんと下山しました。
で、鉄道に乗って、ベルビューで降り、ロープウェーでレズーシュに下り、バスでシャモニーに戻りました。
ホテルに戻りシャワーを浴び、ガイドとメンバーで祝勝会です。
メンバー5人、全員がモンブランに登頂できました。
ガイド曰く、かなりの快挙とのことです。
でも、全員が、満身創痍でした。
翌日は、登頂予備日だったのですが、登頂が終わっているので、ガイドの人達が、メールドグラスの氷河歩きに連れて行ってくれました。
その翌日は、自由行動日です。
シャモニーは治安がいいので、楽しくトレッキングや観光ができました。
最終日は11時半がチェクアウトでした。
その日は土曜日で、朝市が開催されていたので、チェクアウトの時間まで朝市を見学したり、シャモニー市内をウォーキングして回りました。
で、車でジュネーブまで行き、飛行機で帰国の途に就きました。
モンブラン登山は、決してやさしくはないですが、槍ヶ岳の先っちょを難なく上り下りできるレベルの技術と、ある程度の雪山登山経験と体力があれば、十分チャレンジできると思います。
ちなみに、私の雪山登山経験は、大山とか石鎚山を問題なく登山できるレベルです。厳冬期の八ヶ岳などは登ったことがことはありません。
あ、それから富士山、又はそれ以上の高さの山の登山経験もあった方がいいです。
挑戦できるかもと少しでも思ったのであれば、完全個人手配でない限り、その旅行会社に自分の力量と経験を正直に話しておうかがいを立ててみてください。
登山ツアーって、登山がほぼすべてを占めるのが普通ですが、シャモニーは治安もいいし、街並みを眺めるだけでも楽しいし、登山をしなくても富士山より高い場所にも行けますし、観光を充実させることができます。
ということで、個人的な口コミですが、モンブラン登山は超おすすめです。
コースタイム(小休憩込み) ニデーグル → 160分 テートルース小屋 → 180分 グーテ小屋 → 150分 バロ小屋 → 150分 モンブラン山頂 → 180分 グーテ小屋 → 180分 テートルース小屋 → 100分 ニデーグル
2016年7月上旬
注目!30%楽に登れるようになる見て学ぶ登山教室
登山は、道具選びから技術の身につけ方次第で、大きく疲れ具合や楽しみ方が変わります。それらを知らないと危険な上にただの苦行でしかありません。
しかし、実際にそれらをきちんと教わる機会はほとんど存在していません。
そこで、まさにうってつけのDVDとテキストから構成された分かりやすい登山教室を紹介します。
それを見て登山を学び、登山ライフを楽しみましょう。
登山ができると、旅行の幅がう~んと広がりますよ。
あの有名なアルピニスト野口健も推薦する登山家 小西浩文の
『目で見てわかる登山教室』楽しいトレッキング講座